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散歩① 上野~浅草

2011年 3月某日 上野駅から浅草に向かって歩いていた。


その1時間前、高校卒業から4年間浪人した美大受験にすべて落ちて、まっすぐ家に帰れず、ただ途方に暮れて、芸大から上野駅の道を歩いていた。駅の動物園口についても素直に改札に入れず、なんとなく、反対口を目指して歩いた。反対口についてもやはり改札に入れず、ふらふら歩いていると周辺の地図看板が目に入った。上野から浅草の文字が目に入り、なんとなく歩いてみる事にした。


正直、今となってはあまり覚えていないが、ただただ、途方に暮れてたやりきれない気持ちとこれからの不安を抱えながら、それをごまかすように目についた店をのぞいたり、古書店の店先のワゴンをのぞいたり(ワゴンの中の古色紙水墨画だけはなぜかぼんやり頭に焼き付いている)、ただ浅草の雷門を目指して歩いた。


足が少し疲れてきた頃、大ちょうちんが見えてきた。

幼い頃、初めて浅草に連れってもらえる前の夜なかなか眠れなかった事、初めて歩いた仲見世が楽しくてしかたなかった事がキラキラとなつかしく頭によみがえって、言い知れぬ気持ちになって辛かった。


そんな気持ちもあって仲見世も通り過ぎ、とりあえず浅草寺に手を合わせて、横道を歩いて行ったら、大通りに出た(これがロック座の通りだと後になって知った)。古いポスターの富士眞奈美の美貌に衝撃を受けながら、アーケードの商店街に入って行った。この頃はお金を気にしてあまり

外の店で食べないようにしていたが、開き直って何か食べてやろうと思った。今半ではない老舗のようなすき焼き屋とかいろいろ目に入ったが、さすがにそんな金も無く、見ても見てもモヤモヤした気持ちになった時、商店街の入り口にもどった所の290円のラーメンを食べる事にした。よく言えば味の薄い、正直、気の抜けた味だった(その時の心情だったのかもしれない。その後その前を通ったが何となく食べていない)。その後は夜遅く家の坂の手前でカバンを放り投げ、道路に座り込んだあと家に帰って、出迎えた母に「落ちた」と一言いって2階に上がった事しか覚えていない。


その数日後、日本はゆれた。


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